石巻学vol. 10
特集 布施辰治

石巻学プロジェクト編
ISBN 978-4-911530-02-3 C0039 \1500E
A5判並製 242頁
定価(本体1500円+税) 2025年9月中旬発売予定

 今年の参議院選挙ではアメリカファーストだけでもうんざりしているなか、「日本人ファースト」を標榜する政党が多くの国民の支持を得て飛躍的に議席を伸ばし、それに勢いを得て強まる外国人排斥の動きが活発化しはじめている。世の中は確実にいやな方向に進んでいる。こんな時だからこそ、布施辰治に蘇ってもらおうと考えた。
 10号という記念すべき号は、布施が掲げた理想のたいまつを受け継ぎ、語り継いできた人たちの軌跡も追いながら、布施が問い続けた弱い人たちの立場に立ちながら、正義を貫くという、いまの時代にこそ一番大事なことを見直すためだ。
 人間はみな平等で自由であるべきだという、当たり前の信条にしたがって、布施辰治は活動を続け、人々を助けてきた。布施がかかげた人類愛の理念は、布施亡き後も学者や教師、ジャーナリスト、古本屋、中学生、韓国の人々などたくさんの人たちによって語り継がれてきた。だからこそ布施辰治は蘇ることができるのである。
 布施辰治が生まれた石巻で、「石巻学」一〇号は、いままでたくさんの人がつないできたこのバトンをしっかり受けとめ、未来につなぐ一冊にしたいと思ったのだ。 (大島幹雄「蘇れ! 布施辰治」より)

布施辰治 (ふせ たつじ、1880年(明治13年)11月13日-1953年(昭和28年)9月13日)は、宮城県出身の弁護士・社会運動家。1920(大正9)年、「自己革命の告白」を個人誌『法廷より社会へ』に発表、人権蹂躪、社会的弱者、言論弾圧、無産階級擁護の闘いに専念することを誓った。その活動は、アナーキスト・ギロチン社の弁護から、自由法曹団や解放運動犠牲者弁護団での活動にまで及んだ。日本共産党事件の弁護活動のなかで、1932(昭和7)年に弁護士資格を剥奪され、1934(昭和9)年には治安維持法に連座し、収監されるという弾圧をうけた。布施の活動は植民地台湾の農民運動や朝鮮での独立運動の弁護にまで及ぶ。布施辰治の墓碑銘には、「生きべくんば民衆とともに、死すべくんば民衆のために」と刻まれている。

目次
大島幹雄
 蘇れ! 布施辰治
森 正 布施辰治に惹かれて五〇年
大島幹雄(聞き手) 布施辰治に魅せられて――森正は語る
阿部一彦 一人一人ができること
黒田大介 山谷と酒と三十五反 追憶 櫻井清助
猪股剛 古本屋櫻井清助について
伊藤匠 石巻市博物館所蔵「布施辰治関係資料」の整理と活用について
本庄雅之 蛇田に育まれた布施辰治
伊藤匠 布施辰治と石巻
松浦健太郎 布施辰治顕彰活動について
伊藤匠 布施辰治未発表原稿「少数論」
須能邦雄 布施辰治氏の人格形成の私的考察

『石巻学』創刊一〇号記念トーク
南陀楼綾繁+大島幹雄 地域誌の未来を探る

特別寄稿
阿部和夫 石巻公民館草創期における事業展開の一事例――市民に向けて欧米映画の提供を

連載
石巻さかな族列伝10
高成田享 豊かな海を分かち合う 宮城県沖合底引き網漁業協同組合長 鈴木廣志
本間家蔵出しエッセー10
本間英一 石巻湊発展の礎 千石船と武山家文書
復活の企業家列伝7
古関良行 米倉純一さん(「かめ七呉服店」社長)
介護の現場から4
千葉祥裕 長屋門 光と影

装丁=西山孝司(フラグメント)